イオン株が、10月14日の決算発表をきっかけに大きく下がりました。
2025年11月の高値から、約6割も下がった計算です。SNSでは「暴落だ」という声と、「ここまで下がったなら割安では」という声に分かれています。
この記事では、下落の理由と会社の強み・弱みを順に見たうえで、買い時かどうかを判断するためのポイントを5つ紹介します。特定の株の売買を勧めるものではなく、判断の材料を集めた記事です。
現時点で「買い時」と言い切れる材料は、まだそろっていない。
食品スーパーの赤字は広がっていて、借金と利息も増えている。一方で、ドラッグストア事業は大きく伸びていて、株価も高値から6割下がった。
判断のカギは、次の決算で食品スーパーの赤字が縮むかどうか。
何が起きた?株価と決算
10月14日に発表された6〜8月期の決算で、営業利益は555億円でした。前の年の同じ時期より約10%減っていて、市場の予想(約720億円)を大きく下回りました。
直前の四半期は大きく増益だったため、減益に転じたことへの失望が広がり、株価は大幅に下がりました。ですが、3〜8月の半年間で見ると、営業利益1,307億円は中間期として過去最高です。
| 項目 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 6〜8月期の営業利益 | 555億円(前年同期比で約10%減) | 市場予想は約720億円 |
| 3〜8月(中間期)の営業利益 | 1,307億円(約11%増) | 中間期として過去最高 |
| 通期の営業利益予想 | 3,400億円 | 据え置き。前期比で約26%増 |
| 決算発表後の株価 | 1,100円台前半 | 年初来安値を更新 |
株価の動きを見てみましょう。2025年の株式分割後の価格で比べると、高値からの下落は大きいです。
2025年11月(高値)約2,878円
2026年10月約1,127円
※終値ベースの目安。2025年の株式分割後の価格で比べています。
決算は「過去最高の中間利益」と「予想を下回った直近の3か月」が同時に出ました。どちらを重く見るかで、評価が分かれている状態です。
下落の理由は4つ
会社が株価の下落理由は決算の内容や市場の受け止めから、主な理由は次の4つと考えられます。
- 直近3か月の利益が予想を下回った
市場予想との差は約165億円。期待が大きかった分、失望も大きかった。 - 食品スーパーの赤字が広がった
総合スーパー・スーパーマーケット・ディスカウント店の合計が、前年の黒字から赤字に転じた。 - 借金と利息が増えている
有利子負債は約1年半で7,000億円以上増えた。利息の支払いも増加。 - 株価が高すぎた反動
人気が先行して、利益に対して割高な水準まで買われていた。
| 項目 | 前の年の中間期 | 今回の中間期 |
|---|---|---|
| 食品スーパー3事業の営業損益(合計) | 黒字163.6億円 | 赤字123.5億円 |
| うち総合スーパーの営業損益 | 赤字2.3億円 | 赤字126.3億円 |
| 支払利息(中間期) | 236億円 | 340億円 |
| 有利子負債(金融子会社を除く) | 2兆5,355億円(2025年2月末) | 3兆2,767億円(2026年8月末) |
スーパーは利益率が低い業種です。人件費や物流費、電気代が上がっても、食品の値段は簡単に上げられません。ドラッグストアやディスカウント店との競争も、年々きびしくなっています。
食品スーパーの苦戦は、今期だけの問題ではなく、業界全体の構造とも関わっている。短期間で解消するとは考えにくい。
強みもある:ドラッグストア事業
悪い話ばかりではありません。ドラッグストア事業(ヘルス&ウエルネス)は、中間期の営業利益が596億円と、前の年の約2.6倍に増えました。
2026年1月にツルハホールディングスが子会社になった影響が大きく、その分を除いた単純な合算でも約30%増えています。
| 事業 | 今回の状況 | 補足 |
|---|---|---|
| ドラッグストア | 営業利益596億円(前年は227億円) | ツルハの連結が加わった |
| 食品スーパー3事業 | 営業赤字123.5億円 | 価格政策の見直しが課題 |
| グループ全体 | 営業利益1,307億円 | 中間期として過去最高 |
会社は下期に向けて、価格政策の立て直し、販促の見直し、生鮮・デリカの強化、経費の構造改革という4つの対策を挙げています。
通期の営業利益3,400億円を達成するには、下期に約2,100億円が必要です。これは上半期の約1.6倍にあたるため、達成のハードルは高くなったと見る声もあります。
注目ポイント:ドラッグストアは伸びているが、食品スーパーの赤字を補えるかが焦点。通期予想を据え置いたため、次の決算で達成の見込みが問われる。
株価は割安なのか
株価が下がったからといって、割安とは限りません。
利益や資産に対して株価がどのくらいの水準かを、指標で確認してみましょう。10月16日時点の数字では、小売業の平均と比べて、まだ高めの水準です。
| 指標 | イオン | 小売業の平均 |
|---|---|---|
| PER(利益に対する株価の倍率) | 約35.6倍 | 約21.4倍 |
| PBR(純資産に対する株価の倍率) | 約2.55倍 | 約2.26倍 |
| 配当利回り | 約1.3% | — |
イオンのPER約35.6倍
小売業の平均約21.4倍
機械的に計算された参考値です。算出する会社や時点によって数字は変わります。
PERは、2026年2月期の時点では80倍を超えていました。そこから比べると、過熱は大きく解消されています。それでも、平均より高い水準です。
この株は、利益の伸びを先取りして買われてきたとも言えます。今後の利益が見込みどおりに伸びるかどうかで、評価が変わっていきます。
買い時を判断する5つのポイント
ここからは、買い時かどうかを自分で判断するための材料です。どれか1つで決めるのではなく、5つを合わせて考えてみてください。
| ポイント | 見るところ | 補足 |
|---|---|---|
| ①食品スーパーの赤字 | 次の決算で赤字が縮むか | 例年、第3四半期の決算は1月上旬 |
| ②通期目標の達成 | 営業利益3,400億円に届くペースか | 下期に約2,100億円が必要 |
| ③借金と利息 | 有利子負債と支払利息が増え続けていないか | 金利が上がると負担が重くなる |
| ④株価の水準 | PERやPBRが平均と比べてどうか | 下がっても割安とは限らない |
| ⑤自分の目的と余裕 | 優待か配当か値上がりか | 下がっても慌てない資金かどうか |
①と②:決算で確認する
いちばん大切なのは、食品スーパーの赤字が縮み始めるかどうかです。会社が挙げた改善策が効いていれば、次の決算の数字に表れるはずです。逆に赤字が続くようなら、通期の目標も遠のきます。
③と④:数字の裏側を見る
利益のうち、イオン自身の取り分は思ったより小さいことにも注意が必要です。今回の中間期では、グループ全体の最終利益約473億円のうち、約7割が子会社の少数株主に帰属しています。イオン株主の取り分は133億円です。借金と利息の増加もあわせて見ておきたい部分です。
⑤:自分の目的と余裕を決める
同じ株でも、目的によって見方が変わります。そして、決算の結果によっては、さらに下がることもあります。そのときも売らずに持てるお金かどうかを、先に考えておきましょう。
注意ポイント:「ここまで下がったから、そろそろ反発する」という考えだけで買うのは危険。株価が下がった理由が解消されたかどうかを、先に確認する。
目的別の考え方
買うかどうかは、何を目的にするかで答えが変わります。見るべきところを表にしました。
| 目的 | 見るところ | ひとこと |
|---|---|---|
| 優待を使いたい | 普段のイオンでの買い物額 | 使わない優待は意味がない |
| 長く持って値上がりを期待 | 食品スーパーの立て直しと借金の推移 | 数年単位で見る必要がある |
| 短期の反発を狙う | 決算の日程と株価の動き | 下落が続くリスクも大きい |
買うと決めた場合でも、一度にまとめて買うより、数回に分けるほうが値動きの影響を減らせます。投資にかけるお金の上限も、先に決めておくと安心です。
今日からできること
買うかどうかを決める前に、次の3つを進めてみてください。どれも、お金をかけずにできることです。
- 決算資料の事業別の数字を見る
イオンのIRページで、事業ごとの営業利益を確認する。食品スーパーの赤字が、どこまで広がっているかがわかる。 - 1年間のイオンでの買い物額を数える
優待を目的にするなら、実際にいくら使うかを確認する。その額が、優待で戻る金額の目安になる。 - 買うなら、上限額と回数を決める
失っても生活に影響しない額を上限にする。分けて買うなら、時期も先に決めておく。
まとめ
- 10月14日の決算で、6〜8月期の営業利益が予想を下回り、株価は高値から約6割下がった。
- 食品スーパーの赤字拡大と、借金・利息の増加が主な懸念材料。
- ドラッグストア事業は大きく伸びていて、中間期の営業利益は過去最高。
- PERは約35.6倍で、小売業の平均よりまだ高い。下がっても割安とは限らない。
- 買い時かどうかは、次の決算と、自分の目的や余裕資金で決まる。
株価が大きく下がると、「今が買い時では」と感じやすくなります。ただ、下がった理由が解消されたかどうかを見ずに買うと、さらに下がったときに動けなくなります。
まずは次の決算まで、ゆっくり材料を集めてみましょう。
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